elm200 の日記

旧ブログ「elm200 の日記(http://d.hatena.ne.jp/elm200)」

すべてがIT化していく世界

いまビッグデータとAIを扱う仕事をしているのだが、それをやっていてつくづく思うのは、「ITは強力すぎる」ということ。毎年、計算資源はどんどん増えているのに、人類はまだそれを上手く活かせないでいる。これを活かせる人間や組織と、活かせない人間や組織では、毎年どんどん大きな差が生まれつつある。それをIT活用の最前線にいて、痛いほど感じている。

私はずっとITの仕事をそれほど面白いと思わず、正直いやいや仕事をしてきた。だが、最近、ビッグデータ・AI・ブロックチェーンの技術に触れるにつれて、いまだかつてない情熱が湧き上がってきた。

私が退屈だと思っていたのは、テキストフィールドやボタンがどうのというUIの話と、それをデータベースの決まった場所に格納する決まりきった仕事をやっていたからだった。そこから一歩踏み出して、大量のデータに対して、知的なアルゴリズムを使ってさまざまな操作を加える仕事は、想像以上に楽しかった。計算資源ギリギリの線を攻めるといろんな工夫を凝らさなければならないのだが、それを考えるのがとても面白いことに気づいた。当たり前だが、IT自体がつまらないのではなく、ITの中につまらない仕事と面白い仕事があるにすぎなかった。

最近は、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)という言葉が流行っているらしい。大手の銀行などはこれで人員削減をすると大張り切りである。

innovation.mufg.jp

名前は仰々しいのでどんなものかと思って調べてみたら、実際は、従来の Excel のマクロに毛が生えた程度のものらしい。

ロボティック・プロセス・オートメーション - Wikipedia

私は、むしろそんな単純作業で少なからぬカネをもらっている人たちがこんなにたくさんいたことに驚いた。プログラマというのは、単純作業をやらなければならないときも、自分でさっとツールを作って、自動処理をすることが多い。考えてみると、普通の職場にいる人たちがPCを触るとき、与えられたシステムをただ操作するだけで、それを自動化することはいままでできなかったのだ。何という不効率だろうと私は愕然とした。

将来、ユーザインターフェイスが大幅に改善して、人間が機械に語りかければ、何でもやってくれるという時代が来るのかもしれない。だが、そこまでは、人間がある程度、機械に歩み寄って、機械のわかる言葉で話しかけなければならない。コンピューターに関する知識が多ければ多いほど、それは容易にできるようになる。

だったら、基本的に誰でもコンピュータの操作法を学ぶべきではないか。単にいくつかのアプリを使えるというだけでなく、プログラミングもできたらもっとよいのではないか。

こんなに世界に計算資源が満ち溢れ、ITがものすごいものになってしまうと、すべての仕事をよりよくITでこなせる個人や組織がどんどん経済的地位を向上していくことになるだろう。プログラミングの仕事は、今でこそ、プログラマと呼ばれる一部の専門職の独占物になっているが、近い将来、多くの非プログラマたちが、何らかのプログラミングをするようになるのかもしれない。むしろ、それができない人たちは高い収入を得られなくなっていく可能性があるのではないか。

昔は、こんなふうには思わなかった。だが現在の技術・経済・社会の趨勢を見ているとそういう未来がすぐそこまで来ている気がしてならない。

私は、子供の頃、趣味でプログラミングを始めた。本当は常に別の仕事をしたいと希望していたのだが、生活するためにプログラミングをするしかなかった。決して希望してプログラマになったのではなく、消極的な理由でたまたまそうなったにすぎないのだが、どんどん経済の中核的な表舞台に押し出されてきている感がある。正直、私は本当にラッキーだと思う。たまたま買った宝くじが大当たりしたようなものだ。

学校でもプログラミング教育が始まるとのこと。これは正しい方向性ではある。学校の現場からは、「プログラミングを教えられる教員がいない」というぼやきも聞こえてくるが。実際、学校は、たいへんIT化が遅れた場所なので、これがきっかけで学校自体も大きく変貌を遂げることになるのかもしれない(いまの状況を考えるとそれは避けられない気がする)。

私にとってはとても幸運だったとは言え、本当に恐ろしい時代になったものだ。だが現実は受け入れるしかない。