elm200 の日記

旧ブログ「elm200 の日記(http://d.hatena.ne.jp/elm200)」

EV化に乗り遅れる日本

欧州を筆頭に世界がEV化に向けて舵を切り始めている。

www.sustainablebrands.jp

2050年カーボンニュートラル目標に向けて、世界で運輸部門のゼロエミッション化の流れが加速している。欧州連合(EU)の欧州委員会はこのほど、温室効果ガスの大幅削減に向けた包括案の中でハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に終了する方針を打ち出した。世界最大の自動車市場である中国も2035年までに新車販売のすべてをEVなどの新エネルギー車やハイブリッド車にする計画だ。米国は、カリフォルニア州が35年までにガソリン車の新車販売を禁止し、ニューヨークを含む米12州の州知事らと共に国全体での同様の規制を求めている。

一方、日本では、とかくEV懐疑派が多い。筆頭は、トヨタ社長の豊田章男氏。トヨタは当面HVに注力し、EVやFCVなども中長期で推進する「全方位戦略」で行くという。

www.bloomberg.co.jp

豊田氏は、自らハンドルを握ってサーキットを走るような車好きの人。結局のところ、機械機械していて、熱と騒音を出して疾走するガソリン車が好きなんだろうと思う。彼は心底では、EVをつまらない車だと思っているのではないか。そして、世界がEVに向かう速度を見誤っている。

jp.reuters.com

トヨタは2030年に電動車を800万台売るという。問題は内訳だ。そのうちHV,PHVが実に600万台を占める。私から言わせればHVなんてただのガソリン車じゃん、電動車にカウントするなよ、という感じなのだが。EU2035年にHVを含むを全ガソリン車を販売禁止にするというのに、その5年前にそんなにHVが売れるだろうか?販売そのものが禁止されるかなり前から、下取り価格の下落を懸念して、ガソリン車の売れ行きは相当減るのではないか?

www.nikkei.com

そんなトヨタに頼まれたのか忖度したのか、経産省も「EVもHVも水素も」と全方位戦略だそうだ。「二兎を追う者は一兎をも得ず」というではないか。EU・中国等、世界全体がEVに全振りしているのだから、日本も単純にそれに倣えばよいのに、どうして独自路線を歩みたがるのか?こんな落ち目の国が勝手なことをやっても世界の国々がついてきてはくれまいに。

(水素は扱いが面倒すぎて、水素社会が実現することは120%あり得ないと私は思っている。一部の周辺的な技術は実用化されても、水素がエネルギー体系の中心に来ることは絶対にありえない。投資するだけ無駄だと思っているが、なぜこんな筋悪の技術に夢を見たがる人たちが絶えないのか理解できない。たぶん、原子力と同じで巨大な装置産業が必要であり、政治を動かすことでおいしい思いができる人がいるから、という大人の事情があるのだろうと推測している)

いつの時代にも、新しい技術への懐疑派はいるものだ。たとえば、1990年代後半にもインターネット懐疑派がいた。「インターネットは一時の流行り」「おもちゃ」「実用にならない」等々。私は、ずっとインターネットの可能性を一貫して信じていたが。時代には必ず流れというものがあり、それに逆らっても所詮無駄な骨折りで結果は変わらない。ならば、その流れに乗ったほうが良いと思うのだが……。

私がなぜEVにこだわっているかというと、実はこれから20年の経済変革の中心に位置するのがこのEVだと思っているからだ。自動運転と再生可能エネルギーの普及を通じて経済全体の構造を作り替えていくものだろうと。もはやIT技術単体はあまり重要ではない。スマホは完全にコモディティ化しているし、スマートグラスもまあ・・・という感じ。"the next big thing"は必ずEVの周辺にあると信じている。

個人的動機もある。EVに関しては、私は乗り心地が最高だから普及してほしいと思っている。特に再エネ大好きなので、これと組み合わさったら最高だな、と。私がEV化を主張するのは、正直、私自身がそういうEVが普及した世界に住みたいという希望があるからだ。これがポジショントークであることは否定しない。

ただ、同時にマーケットやネットワーク外部性の力を信じているので、一度物事がある方向に向かい始めると、加速度的にその分野が成長していくことはあるのではないか、とも思っている。いま流れはEV+再エネに来ている。そうなると、小さな技術的障害はどんどん乗り越えていってしまうものなのだ。大勢の人たちが大量の資金を使って、いろんな手法をどんどん試していくからである。したがってEV懐疑派が「二次電池を作るときにCO2を大量に出すじゃないか」とか「内燃機関もエネルギー効率が上がっていて」などと各論で攻めてきても、こちらかすると「だから何?」という感しかない。

日本はこの30年間、賭けるべき技術を間違い続けてきた。だから、今回もHVという古い技術にこだわり、水素などという無駄な道草を食って、EVや再生可能エネルギーへの投資が遅れている。私はもうこの点はあきらめている。日本経済には未来がないということをただ淡々と再確認するだけだ。おそらく日本円がさらに安くなっていくのは確実だと思われるので、せいぜい外貨建ての資産を育てていき、来るべき日本経済のさらなる低迷に各自備えるしかないと思う。