elm200 の日記

旧ブログ「elm200 の日記(http://d.hatena.ne.jp/elm200)」

会社を辞めるべきか否か

私はいまある機械学習系の会社で正社員として働いている。

この会社に対する思いをあえてブログで公開してしまおうと思う。 この数年間ずっと感じてきて、いまいろんな矛盾がクライマックスに達しており、辞めるべきかどうか真剣に悩んでいるのだ。

この数年間、私はほとんど何もネットで発表することができなかった。 私の場合、ネットに対しては、自分の私的な思いをぶちまけるスタイルなので、どうしても自分に関係する事物に対して言及せざるをえなくなる。 ところが正社員として働くといろんな関係者とのいろんなしがらみがあり、どこまで何を言ったらいいのかわからなくなる。 そうなると何も言えなくなってしまうのだ。

いまのインターネットは何かと炎上騒ぎが多い。変な形で注目されると自分とはまったく立場の異なる人たちが大勢押し寄せてきて大騒ぎになってしまう。炎上マーケティングをしている人にとってはコストの一部かもしれないが、商売抜きでネットに関わっている人間にとっては、神経をすり減らすことになる。

私は公式には自分の所属企業を明らかにしていない。明らかにした上で、「これらは私的意見であり、所属企業とは関係ありません」と断りを入れれば、それで良いのかもしれない。それでも、この数年間、もし自分が書いたことで何らかの副作用が起こることを恐れていた。恐れれば恐れるほど何も書けなくなった。

書けなくなると精神が閉塞した。自分の魂の深い部分とのつながりが断ち切られたような、実存的な寂しさを感じた。下世話な言い方をしたら、「精神的便秘」とでも言おうか。世の中に向かって、自分をはっきり主張できない感じである。

そうなってしまった一つの理由は、私の所属企業の雰囲気もあると思う。社長は、外資系コンサル出身の人で、ノリはバリバリのビジネスマン。ウェブエンジニアのオープンソースや情報共有を是とする雰囲気ではなく、情報を囲い込み特許を取り知財をライセンスすることで儲けようという指向性を感じる。それ自体、責められるものではなく、金儲けという目的からすると正しいのかもしれない。ただ、私の指向性とは異なる

そういうわけで、そういう会社に集まってくる人たちもまた、積極的にネット上で自分のプレゼンスを主張する人たちではない。一部の人たちは匿名かつ会社とのつながりは隠して、ネット上で言論活動を行ってはいる。ただ、私は昔、外国にいたときのノリで、あくまでも実名でやっていきたいと考えているほうだ。顔出しもしてしまっているしね。(だいたい外国の人たちは、実名顔出しで活動していることが多い(匿名な人もいないわけではないけど)。でも日本人は本当にそういう人たちは少ないよね……)

まあ、こんなそんなで、私はどうもネットで自分を表現することが全くできなくなってしまった。せいぜいやっていたのは時事問題について Twitterはてなブックマークで評論する程度。それも1年くらい前からあまりできなくなってしまった。

私の所属企業の名誉のため言っておけば、この会社、とてもいい会社である。社員の人たちの人柄は良い。技術者の技術力は極めて高いし、営業の人たちも非常に優秀で顧客対応も素晴らしい。正直、非の打ち所がない。

ただ、正直、そういうあまりにそつなくビジネス的な部分、というか、広く社会への情報共有を是としない部分が、自分の価値観とは合わないのだ。

価値観。

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先日見たこの動画、とっても説得力があったのだが、「能力やら報酬やらそういう面ではいくらでも会社は従業員に便宜を図れる。ただし、価値観の不一致だけはどうしようもない。価値観が合わないなら転職すべき」という主張をしていて、本当にその通りだなと思った。

そう考えるとやっぱり転職または独立すべきなのかな、とも思う。

所属企業の機械学習エンジニアの人たちは、本当に優秀で、私は正直ついていけていない。ある大きなプロジェクトが終わったタイミングで、「もう綱渡りみたいな仕事を繰り返してはいけない」と強く思い、行動を起こすことにした。この会社で私のような実力の者が機械学習エンジニアのポジションにいるのはふさわしくないと思った。だから、それは辞めて、機械学習の周辺にいるエンジニア(機械学習モデルを組み込むとか、APIの受け口を作るとか)になろうかとも思った。ただ、それらはできることかもしれないけど、本当にやりたいことだろうか?いま一つ自分でもわからない。

私はどうも顧客に喜んでもらいたいと思っているようだ。ただ、機械学習プロジェクトは成功率が低いこともあって、この数年間で私は成功の実感を持てなかった。AI技術は、現実の様々なタスクに対する適用の仕方が一番重要である。逆に言うと、正直、機械学習モデル自体はそこまで高度でなくても構わない。それより、データの質と量とか、どの業務にどのように適用するか?とかそういうほうが重要であることを経験を通じて知った。本当は、もう少し簡単なプロジェクトで定型的な機械学習モデルを使って手堅くタスクを解いていくということをやってみたかったのだと思う。ただ、この会社は高度なAI技術を提供することを売りしている(実際、エンジニアは優秀なのでそれができる)から、私の思いとは整合しない。

これから数日、次の仕事をどうするか会社と話し合うことになる。 場合によっては辞めることも考えている。 というか、たぶん辞めるべきなんだろうと8割くらい思っている。

正社員というのを初めて長く(3年間)やって、そのうまみを知ってしまった。 こうやって毎月、同じ額の給料が振り込まれるって本当にありがたいんだよね。 それ以前は、フリーランスでいるのが当たり前だったから、そんなことを思いもしなかったんだけど。

安定した定期収入を失うのは痛い。たぶん辞めるべきと思ってもなかなか「辞めます」と言えない理由の8割くらいは、このカネへの執着なんだろうと思う。 でも、経験上、カネのために仕事をし始めると、その後、ロクなことが起こらないことを私は知っている。もちろん、仕事はカネを稼ぐためというのが基本なのだけど、それでもなお「その仕事をやる意義を感じられるか?」という点を満たさないと楽しく仕事ができず、長続きしないのだ。

これから数日で何が起こるのか自分でも予想がつかないが、何とかするしかないし、まあ、何とかなるだろうとも思う。 「明日は明日の風が吹く」の精神かな。