elm200 の日記

旧ブログ「elm200 の日記(http://d.hatena.ne.jp/elm200)」

イチローとケムリクサに共通するもの

ずっと書きたかったのだが、ようやく時間がとれたので、簡潔に。

イチローが引退した。3月21日のことだった。

その中で印象に残っている言葉がこれ。

oreno-yuigon.hatenablog.com

少年にメッセージを送ってほしい

野球だけでなくてもいい、自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つけてほしい。 夢中になれるものが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁に向かっていくことができる。 それが見つけられないと、壁が出てくると諦めてしまう。 色んなことにトライして、自分に向くか向かないかよりも、自分が好きなものにトライしてほしい。

私はこの一節を聞いたとき、思わず涙ぐんでしまった。素晴らしいよね。「向く向かないか」ではなく「好き」で自分の道を決めろと。イチローは結果として大成功したけど、それは後から見たらそうだったという話で、最初から成功するかどうかなどわからなかった。プロ野球の世界は厳しい。超一流の才能を持った人でさえ、いろんな事情で活躍することなく去っていくことがある世界。イチローは恵まれた資質を持っていたのは確かだろうけど、それでも彼が絶対に成功する保証はなかった。

彼はインタービューの別の箇所で、「野球を愛する気持ちだけは変わらなかった」と言っている。できるから、成功できそうだから、やったのではなかった。好きだからこそ続いた。結果として成功した。ただ、イチローは自分が成功しなかった別の世界線のことも常に胸に抱いている気がする。それでも、きっと彼は後悔しなかっただろう。好きを貫けたのなら。

もうひとつ。

今クールで大変人気を博しているアニメがある。「ケムリクサ」だ。

私は3年ぶりにブルーレイを買ってしまった。監督は、2年前、「けものフレンズ」でその名を轟かせた、たつき氏。彼を含むわずか数名の少数精鋭で制作された。中身は見ていただくとして(アマゾンプライムビデオで視聴可)、「『好き』を見つけること」というのをテーマにしている。

たつき監督は、とにかくアニメ制作に強い情熱を持った人で、「週5日仕事でアニメを作り、休みの2日で趣味のアニメを作る」と言われている。その彼が全身全霊を注いで制作した「けものフレンズ」は空前の大ヒットとなった。ところが、その直後、不可解な事情にて、「けものフレンズ」の制作から離れざるを得なくなった。身を切られる辛さであっただろう。だが、彼はアニメ制作をあきらめなかった。今度は、この「ケムリクサ」の制作に取り組むことになった。

結果は、再度の大ヒット。完全に名声を確立した。この作品のテーマが「『好き』を見つけること」なのは、彼がアニメを好きだという気持ちを、作品を通して再確認したかった、というのもあるのではないかと想像している。

私は、いま仕事の方向性を大きく変えつつある。ウェブエンジニアから機械学習エンジニアへ。いま機械学習に対して強い情熱を感じている。これは私の「好き」なのかもしれない。成功するかどうかはわからない。でも、イチローが言うとおり、「自分が好きなものにトライ」すべきなんだろうと思う。イチローがそうしたように。たつき監督がそうしたように。ちょうど私がそういう思いでいるときに、この二人のメッセージは心に深く刺さった。

個人的な気持ちを抜きにしても、いまは「好き」を追いかけるべき時代なのかもしれない、とも思う。定型的な仕事は、どんどん機械に置き換えられていくような時代だ。機械に置き換えられない、個性的な仕事ができなければ、職を失うかもしれない。そのためには、「好き」を追いかけるしかないのではないか。好きだとしても、必ずしも成功するとは限らない。結局、方向転換しなければならないこともあるだろう。だが、そうやって挑戦したことは決して無駄にはならないと思う。そして、仮に最後まで成功できなかったとしても、それでも良いと思う。なぜなら、結局、好きなことをやれたのだから。好きなことをやっているうちは楽しいのだから。それは、金銭や名声には換えられない、一番大切なことじゃないだろうか。